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第1章

多くの表形式のデータは、検討する主題としてのサブジェクトと、それに掛かわる受けとしてのアトリビュートと、それらの各要素であるノードの関係を示す連環度の数値の3種の要素からなっていて、2元表とも呼ばれている。この章では簡単な1組の2元表のデータを可視化する問題を扱う。

1. 連環度が計量値の表を読む
企業の特徴・・・企業のビジネス領域がCIの基礎

対象としてのサブジェクトと、その特徴となるアトリビュートと、それぞれを構成する要素であるノードを連環する度合いが連続的な計量値である場合を考えよう。ここでは連環度の物理的な単位が異なる2元表を扱う。

1.1 データを用意する

対象となるサブジェクトは飲料メーカ6社で、その特徴となるアトリビュートは5種類のアルコール飲料である。対象と特徴要因を連環する強度を、出荷量としよう。表は下記のように6行×5列の表の形となる。

表1.1
製品 ビール 発泡酒 ワイン ウイスキ 焼酎
企業 万ケース 万ケース 百万リットル 百万リットル 百万リットル
アサヒ 15,000 5,000 15 19 89
キリン 9,000 8,000 0 5 0
サッポロ 4,000 2,000 17 0 0
サントリー 1,000 3,000 48 63 84
メルシャン 0 0 43 0 41
0 0 0 0 129
2006年度の各社の出荷量、“日経シェアーデータ”より

この表を見ると、ビールはアサヒがトップで、発泡酒はキリン、ワインはサントリーとメルシャン、ウイスキーはサントリー、焼酎は宝である。

販売量は、アルコールの種類によってケース売りもあればリットル売りもあるので、様々な単位である。

この表をどう読むかは、各アルコールの種類毎に見てゆけば、それほど難しくは無いが、一目で見えるようにMAP化してみよう。

1.2 MAP化してみる

上記の[表1.1]をDCB-Analysisに入力し、DCB-Mapで図示してみよう。

アルコール飲料メーカーMAP
図1.1

ここでは、サブジェクトを飲料メーカ6社とし、アトリビュートを各社が扱っているアルコール飲料の種類別とし、その販売量データの2元表を連環度分析に掛け、MAP化した。このように、企業とその扱い商品のボリュームデータで構成される2元表をMAP化し、可視化すると、一目で、それらの関係や特徴が明確になり、企業のイメージポジションがはっきりする。

メルシャンはワイン、宝は焼酎、キリンはビールと発泡酒である。ただ、サントリーとアサヒはウイスキーに近いが、中心に近いため、企業の特徴がはっきりしていないとも言える。

サッポロは、ビールや発泡酒で販売量が少ないので、やや離れているが焼酎、ウイスキーはゼロなので、その反対側に位置している。

ビールや発泡酒も、各社が扱っているので、中心に近く、特徴が明確でない。

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1.3 MAPを読む

これらの結果は、我々が各企業に持っているイメージに比較的合っているのではないだろうか? 人でも自己紹介をするのに、「私は仕事として○○をしております」と言うように、そのビジネス領域が、CIの基本であることが判る。

企業のイメージをもっとも良く表わしているのは、その企業の提供している“製品やサービス"でありビジネスドメインである。企業のイメージポジションは、その企業が扱っている製品やサービスのジャンルによって、一義的に規定されていると言えるのではなかろうか。

【解説コーナー】コーポレートアイデンティティとイメージポジショニン1

「日本で一番高い山は?」。「それは富士山」と誰でも答えられるが、「2番目に高い山は?」と聞かれて応えられる人は5%位であろう3

有名な話は、「アメリカを2番目に発見した有名な人は誰でしょう?」という質問である。その答えは、ある意味でコロンブス以上に有な人で、ヒントはオバマ大統領がしばしば口にする言葉と関係がある人である。

ビールと言えば「スーパドライ」と決まっていたが、最近では発泡酒や第3のビールが出荷量で逆転し、ブランド林立の時代となって、ビール系の企業イメージが流動してきている。

いわゆるイメージポジショニング戦略は、大量生産、大量消費、大量流通の時代から、メデイアと多様化と流通のグローバル化によるビジネスプロセスのパラダイムシフトにより、ブランデング戦略も大きな転換点に差し掛かっている。

今までは、単純なスケールのパワーが支配する“ブランドイメージNo.1ポジション戦略"が指導的なロールを担っていた。しかし、マスメデイアが支配的だった時代にくらべ、もっときめ細かいNo.1イメージ戦略が必要になっている。

従来でもブランド全く新しいブランドを築こうとすれば、システマチックな広告戦略とかなりの資金投資が必要で、例え10億円を数年間投入しても認知度で10%を確保することは確実とはいえなかった。これを賄うためには、製品ジャンルによっても異なるが、ブランド関連の売上が少なくても50億円か100億円が必要になる。

ビール系アルコール飲料に見るように、商品ブランドの多様化現象は、商品のカテゴリージャンルの多様化をもたらしている。そして市場のセグメント化が進み、細分化が進んでいる。こうしたビジネス環境の中で、マスメデイア中心のブランデング戦略は、ほとんど無力になっている。

1.4 意見を交換する

解釈テーマ1.4.1

このMAPでは、図の右上にワインとビールや発泡酒がありその反対の左下に焼酎やウイスキーなどがあり、右上はあるコールドが低いものがあり、逆に左下は、アルコール度が高いものがある。また図の右側にビールやウイスキなどの洋風のアルコールがあり、逆に左側には焼酎があり和風である。ワインもぶどう酒は昔から日本でもあったので、和風に近いともいえる。